2005年11月12日
今年で3度目の来穂となる、久元祐子ピアノ・リサイタルを終えて。
今回はプログラムも充実した素晴らしいコンサートでした。

 久元祐子さんが安曇野にお越しいただいて、早いもので3年の歳月が経ちました。もっとも身近なピアニストとして心優しく気軽に接していただいてファンも増え、主催する私どもにも本当に来ていただく度に心が和みます。

久元さんたちが前日の11日にホールに入り、調律士の佐野さんのメンテナンスが終える夕刻まで、夕暮れ時でアルプスも夕闇に包まれる時間帯でしたが、大王ワサビ農場に出かけました。そして、仕上がった(調律は翌日)ピアノを午後10時過ぎまで弾き込みをされました。そして、ホテルでゆつくりと温泉に浸り体も心もほぐして、明日の本番の朝、調律を終えてからがリハーサルに入ります。

さて、2005年は久元さんにとって、1月22日の「愛がいっぱいコンサート」でバスの戸山俊樹さんと、そして5月15日にはヴァイオリンの島田真千子さんとのジョイントリサイタル、そして何と3度目の今回が待望のピアノ・ソロ リサイタルです。いまだかつて1年のうちに三度も来て頂いた演奏家はいません。それも何かと多忙な久元さんが、安曇野の小さな私どものホールに来ていただけることは嬉しい限りです。昨年の皆様からのリクエストにコンサートはプログラムも多様で、馴染みのある曲が多く好評でしたが、 今回のプログラムも、モーツァルトとベートーヴェンのピアノ・ソナタが主で、本当に聞かせどころがたっぷりあり、安曇野での久し振りの本格的なピアノ・リサイタルでした。調律も佐野さんが今回のプログラムに合わせていただいたようで、本当に素敵な音色を奏でていただきました。

ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111はベートーヴェンのまさしく最後のピアノ・ソナタで生涯の恩人であるルドロフ大公に献呈されたものだそうです。演奏時間も約35分にわたり、ソナタ形式、奏曲形式から出来ており、ハ短調からハ長調へという調性形式は、まさにべーとーヴェン特有の「苦悩とその克服」というドラマを、演奏された久元さんも、その作曲者の心を受けてか涙が滲み出るような感極まる表情が、カメラ目線から見受けられたのは私だけでしょうか。

今回の素晴らしい演奏に、ホールが満員に出来なかった私どもの力なさに悔いを残す結果となり、久元さんに本当に申し訳けなかった反省しています。これからも、日頃のご多忙でのお疲れを安曇野の美味しい空気と景観と、温泉に浸りリフレッシュに来ていただけることを願っています。

最後に熱心に演奏を聞いていただいた皆さん有難うございました。それから、いつも素晴らしい演奏を頂いている久元さんに改めて御礼を申し上げたいと思います。
長谷川芳治

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